配偶者と死別や離婚などの理由によって離別してしまったシニアの方が、再び縁あって異性と恋愛関係に発展し、パートナーシップを結びたいと思うことがあります。

そのようなときには相続問題、特に遺産分割をどのように行うのか考えておきましょう。前の配偶者との間に子どもがいた場合、その子どもと義理の父母の間で相続争いが発生してしまうかもしれないからです。


熟年再婚と相続の問題

シニアのライフプランニングを行う際に、既婚か独身かは極めて重要ですが、近年シニア世代の離婚、いわゆる熟年離婚が増加していると言われています。

長年連れ添った夫婦関係は場合によってはその分不満も蓄積しており、特に夫が定年退職をして毎日に自宅にいるようになって妻の我慢が限界に達するなどはよく聞く話です。

ただ熟年離婚が増える一方、熟年での再婚も増加してきました。年齢別の統計ではありませんが、厚生労働省の「人口動態統計月報年計」によれば、全婚姻数に占める再婚件数の割合は若干増加しています。

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熟年での再婚は、特に子供がいる場合に相続の問題発生に気を付けなければなりません。

結婚をすれば配偶者に対して非常に大きな相続権(法定相続分は1/2)が発生するからです。特に片方(大抵は男性)の財産が多かったり後妻となる方に連れ子がいたりした場合、あるいは極端に年齢差がある場合は、相続を理由に子供が結婚に反対する場合が多くあります。

もちろん結婚はあくまで当事者双方の合意によってのみ成立するものであり、子どもといえどもの当人以外の人間が口を出せることではありません。

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しかし、大きなお金が絡むことになると、そうとは言えない事情もあります。子どもの立場からすれば一次相続で受け取れる法定相続割合での遺産は子ども分の合計で半分になってしまうからです。

長年連れ添った配偶者であれば、遺産の形成過程への寄与という高い配分の正当な理由がありますが、財産を形成した後に婚姻することの多い熟年再婚の場合、このような理由には当たりません。

その一方、被相続人となる方にも愛する配偶者に財産を遺したい、少なくとも生活の苦労はさせたくないという思いが強い場合が多いでしょう。新たな配偶者が介護や生活の面倒などもこの先見てくれる場合、配分はともかくとして心情的に遺産を受け取れることに納得できる、という子どもも多いと思います。

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結局どのように遺産を分けるべきかということに関しては明確な指針はなく、当事者同士で解決を行うしかありません。

当事者同士で話し合いが付かなくなり、最悪の場合は法廷での争いになり、その場合は法律の定める「法定相続割合」や遺言等に則って進んでいくことになります。

※比較的揉め事が少ないのは、再婚するまでの財産の相続権は子どもたちに優先的に設定しつつ、心情や介護などへの貢献も配慮するという方法です。

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いずれにしても、保険や介護などのことも含めて事前によく考えておかねばなりません。

ちなみに、2016年夏に放映された「後妻業の女」(出演:大竹しのぶ、豊川悦司)では、大竹しのぶ演じるプロ後妻の武内小夜子が、結婚相談所で熟年男性に近づき、内縁関係で公正証書遺言を作成させ、財産のすべてを持っていくことを繰り返し、納得がいかない子どもとの争いに発展するさまが描かれていました。

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生前の相続放棄は無効、遺留分放棄は有効

熟年再婚の場合、子ども側が義理の父母となる方に対して生前のうちに相続放棄を求め、相手もそれに応じることがあります。しかし、このような場合には注意が必要です。

なぜなら相続放棄は相続の発生後に行う手続きであり、生前の相続放棄はすべて無効となるのです。

このことを子ども側だけ勘違いしてしまい、「もう相続放棄をしてもらったから大丈夫」と油断すると後でトラブルの原因となってしまう場合があります。

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生前に行えることとしては、財産を有する実父母に対して遺言書を作成して貰うか、財産を生前贈与して貰い、義父母に対しては遺留分(※)の放棄をしてもらうことです。この方法であれば法的な拘束力が生じます。

※遺留分とは、法定相続割合の半分について法定相続人に定められている最低限の財産を相続する権利で、遺言によっても遺留分はなくなりません。

例えば、遺言により財産のすべてを相続した相続人は、他の相続人が遺留分減殺請求という手続きをしてきた場合、遺留分相当額を支払うことになります。

CHECK::遺留分の放棄は家庭裁判所で審判を受ける必要があり、許可を得られない場合もあるので注意が必要です。

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遺言書のススメ

財産の問題の他に、介護やお墓の管理など熟年再婚にはさまざまなテーマが発生します。それらの問題を先送りにしてしまっては相続の発生時に、より大きな問題となってしまいます。

デリケートなテーマではありますが、再婚のタイミングではよく話し合い、遺言書にまとめておくことが望まれるでしょう。

こうしたことを厭わずに行うだけで、ドロ沼の相続争いの発生率は大きく下げることができるのです。

家族内だけでどうしても結論が出ないという場合は、被相続人となる方がお元気なうちに経験豊富な第三者の専門家に相談したりする機会を設けることも有効です。

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