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年金に対する不安と不満・年金積立金の運用について
これまでやや悲観的だった年金支給水準。
ここでは少しポジティブな話題に切り替えてみましょう。
年金制度には積立金があります。厚生労働省が発表しているデータによると、
2014年(平成26年)末時点で年金積立金は203.6兆円。
厚生労働省のホームページから辿ることができる2003年(平成15年)
以降の期末積立金残高の推移は、以下の通りである。
積立金は2005年(平成17年)末までに徐々に増加し、
2007年(平成19年)以降は減少に転じ、
2012年(平成24年)から再び増加に転じている。2007年(平成19年)には
「サブプライム問題」で株価が下落し、
2008年(平成20年)には「リーマンショック」でさらに株価が下落した。
そして、その後約3年間、株価は低迷しました。
これは、年金積立金残高の推移とほぼ同じです。
年金積立金が増え始めたのは2012年(平成24年)からです。ここからは、「アベノミクス」による株価上昇と一致します。
しかし、2013年(平成27年)には運用損が発生しています。
2013年(平成27年)には、中国での株価急落の影響で株価が下落。
2016年(平成28年)上半期は、英国のEU離脱が決まり、
株価も一時的に下落したため、
2016年第1四半期に5.2兆円の運用損失が出ましたが、
第2四半期には 約2.4兆円の利益、
第3四半期には10.5兆円の利益と持ち直しています。
年度末の実績は、原稿執筆時点では不明だが、
2016年度の運用益総額は10兆円を超える可能性が高いという。
安倍政権の3年間で積立金が30兆円以上増加
このように、年金積立金の運用は、株価や景気と連動しており、
その意味では経済政策が重要であるともいえる。
2012年からの安倍政権の3年間で、積立金は30兆円以上も増えています。
年金給付費自体がすでに「赤字」の状態であり、
毎年数兆円が積立金から繰り入れられているので、
この3年間の運用益はさらに大きくなります。
積立金の運用にはリスクがあり、
運用状況によっては積立金が減る可能性もありますので、
全面的に喜ぶことはできませんが、
2007年(平成19年)から減り続けていた
年金積立金が増加に転じたことは、
年金制度にとっては朗報です。
この状況が続けば、将来の年金支給水準の引き下げが
多少緩和される可能性もあります。
よく、「株価が上がっても、
株を持っていない庶民には関係ない」と
言われますが、これを見ても、そうとは言えません。
庶民にとって大切な年金制度にはプラスになります。
ただし、すぐに効果が現れるわけではありません。
将来の年金支給水準の低下を多少なりとも緩和するという形なので、
庶民がすぐに、あるいは直接的に恩恵を受けるわけではない。
しかし、水面下では庶民に恩恵をもたらしている。
年金積立金を株式に投資すること
(現在は積立金の一部を株式に投資しており、昨年増額した)について、
リスクの観点から批判する人がいる。
その意見にも一理あると思いますが、日銀がマイナス金利を導入し、
安全資産と言われる国債にはほとんど金利がつかないので、
国債に投資すると貧乏になってしまいます。
ですから、積立金のかなりの部分を株式で運用するのは
やむを得ないと思います。そして、
それを保証するのが時の政権の経済政策です。
世界的な経済ショックがあれば、
その国の経済政策に関係なく株価は下がるかもしれませんが、
経済政策がしっかりしていれば、「傷」は浅くて済むはずです。
選挙前の世論調査などでは、有権者が重視する政策として
「社会保障政策」が常に上位に入っている。
しかし、社会保障制度そのものの改革も重要ですが、
その土台となるのは経済政策です。社会保障政策は、
経済政策が成功してこそ成り立つものだと言えるでしょう。