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年金に対する不安と不満の声年金水準はどこまで下がるのか?
政府は、年金制度を維持するための対策(年金カット法案等)を
行っているが、十分ではない。したがって、
年金制度が崩壊することはありませんが、
年金の支給水準が下がることは覚悟しなければなりません。
以上が、”年金制度は破綻するのか?”というテーマに対する私の答えです。
では、年金の支給水準はどれくらい下がるのでしょうか。
引き下げの水準については、今後の経済状況や出生率などが
関係してくるので明確には答えられませんが、
現在の水準の約2割減というラインが暫定的な目安に
なるのではないかと思います。その根拠は、2004年の改定で
「100年の安心」としており、年金の「所得代替率(※1)」が
将来的に現役時代の平均所得の50%以上を確保すると
されているからです。だってそうなんだもの。
当時の所得代替率は約60%でしたから、
それが将来50%程度に下がるということは、
当時の年金支給水準が将来20%弱下がるということになります。
2004年の改定後は、年金支給水準を引き下げる
「マクロ経済スライド」がほとんど機能していないため、
現在でも所得代替率はほとんど変わっていません。
そのため、現在の基準でも2割程度の減少が目安となっています。
マクロ経済スライドが機能していなかったということは、
当時の年金財政が予想以上に悪かったということですが、
2004年の改定で50%確保するとしている以上、
もし20%減で年金財政が回復しない場合は、
他の対策がとられる可能性が高いと思います。
ところで、この「所得代替率50%」という指標は、
誰にでも当てはまるものではありません。そもそも、
年金の所得代替率は、その人の現役時代の収入に依存する。
例えば、サラリーマンの年金は、定額の「基礎年金」と
報酬比例の「厚生年金」を合わせた、いわゆる「2階建て年金」です。
定額の「基礎年金」は、加入期間が同じであれば、
本人の収入に関係なく同額の年金が得られることになる。
年金加入の最小単位は1カ月なので、
「年金の月額単価(年金加入月数に対する年額)」は、
定額と言い換えることができます。
一方、「厚生年金」は報酬に比例しています。
つまり、「年金の月額単価」は報酬に比例します。
ただし、この場合の報酬とは、厚生年金の保険料の
根拠となる報酬のことで、サラリーマンが
会社から受け取る給与や賞与に適用されます。
それ以外にも、例えば、株で儲けていたり、
不動産を持っていて家賃収入があったりしても、
保険の対象にはなりませんので、年金額には反映されませんし、
所得代替率の計算からも除外されます。
サラリーマンの年金保険料は報酬に完全に比例しますので、
年金額が報酬に完全に比例するのであれば、
「所得代替率」は一律に計算できます。
しかし、実際には「報酬比例型年金」と
「定額型年金」が混在している、
いわば「不完全な報酬比例型」となっています。率」が低いのである。
では、なぜ厚生労働省は、
将来の年金の「所得代替率」が50%だと言えるのか。
実は厚生労働省は、様々な条件での各世帯の「所得代替率」を
公表しています。しかし、将来の年金支給額の水準を
示すことは困難である。そこで、厚生労働省は2004年の改定で、
一定の条件の世帯を「標準世帯」として設定し、
将来の「所得代替率」を示すことにしました。
2004年の改定時、「所得代替率」を50%以上確保した
「標準世帯」は、平均的な所得者
(月給約36万円、ボーナスを含む年収約470万円)である。
妻は「第3号被保険者」となります。
つまり、厚生労働省が将来的に50%確保するとしている
「所得代替率」は、すべての人(または世帯)に
適用されるものではなく、「標準的な世帯」にのみ適用される指標なのです。
したがって、厚生労働省の「所得代替率」を自分に当てはめて
将来の年金額を算出することは、ほとんど意味がありません。
ただし、「所得代替率」自体は世帯条件によって異なるとしても、
現在の年金額から約20%減少するという点では、
世帯条件に関係なく同じです。
したがって、「所得代替率50%」の「50%」という
数値にはこだわらずに、
現時点の自分の年金額または年金見込額
(60歳まで今と同条件で勤務した場合の見込額)を基準に、
将来はその8割程度になると想定しておくべきだろう。
なお、年金支給水準が20%下がるということは、
あくまでも「実質額」であって、
必ずしも名目額が下がるという意味ではない。そして、
20%下がりきるまでには、
20年から30年程度の期間はかかると思われる。
※1) 年金受け取りのスタート時点(65歳)での年金額が、
現役世代の手取り収入(ボーナス込み)と
比較してどのくらいの割合かを示すもの。