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年金に対する不安と不満の声・マクロ経済スライド」とは?
「2004年改正」の内容は多岐にわたりますが、
主な改正点は、基礎年金給付費の国庫負担率
(税金から年金給付を補助することを「国庫負担」といいます)を、
3分 1から2分の1にして、段階的に保険料を引き上げること
2017年(平成29年)1年間で国庫負担率を確定させること。
そして「マクロ経済スライド」です。
2004年(平成16年)の年金改定前後の新聞では、
「マクロ経済スライド」という言葉がかなり流行っていました。
もともと年金額は、物価や賃金水準の変動に応じて変更されるものである。
分かりやすい例で言えば、物価が2%上がれば、年金額も2%上がる。
これを「スライド方式」といいます。
年金の支給水準は、物価水準や賃金水準の変動に応じてスライドし、
「実質的な価値」を維持するように設計されている。
マクロ経済スライド」とは、この「スライド」
を少しだけ割り引いたものである。いわば「割引スライド」ですが、
これは将来、年金財政の収入(保険料などの負担)と支出(年金給付費)が
均衡するまで行うことになっており、この期間を 調整期間」と呼び、
割引率を「スライド調整率」と呼びます。
スライド調整率」は、公的年金加入者の変動率や平均寿命の
伸び率などの指標に基づいて算出されます。例えば、加入者数が減れば、
保険料収入が減ることになり、年金財政にとってはマイナス要因となります。
また、平均寿命が延びることは国民にとっては良いことですが、
年金財政にとっては、一人当たりの平均生涯年金受取額(=年金財政の支出)が
大きくなるので、年金財政にとってもマイナスになります。
したがって、年金受給者数が減ったり、平均寿命が延びたりすると、
「スライド調整率」は少しずつ増えていくことになります。
このように、「スライド調整率」は変動するものですが、
現在は1%程度と言われています。
スライド調整率」を1%に設定すると、例えば物価水準が2.5%上がった場合、
年金は2.5%上がるが、1%の「スライド調整率」が差し引かれて
1.5%しか上がらないことになる。ということがわかった。
すると、年金の名目額は増えるものの、「実質額」は「スライド調整率」の
分だけ減ることになる。このように、「マクロ経済スライド」は、
年金支給水準の「実質額」を長期間にわたって徐々に
下げていこうとするものです。
インフレ率が「スライド調整率」より小さければ、
年金額は変わりません。
しかし、「マクロ経済スライド」は、
デフレ期には実施しないことになっていた。デフレ下では、
従来の制度でも「スライド方式」で年金支給額の水準を下げることになっていた。
しかし、この場合、年金の「実質額」は維持される。
従来の「スライド方式」は、物価が1%下がれば、
年金も1%下がるというもので、デフレ下では、年金の名目額は下がるが、
実質額は下がらない。
デフレ下で「マクロ経済スライド」が作動した場合、物価が1%下がると、
物価下落率が1%+「スライド調整率」が1%となり、
年金総額は2%下がることになる。この場合も、実質的な年金額は1%しか
減りませんが、名目額は2%減ることになります。
実際、年金受給者にとって、年金額引き下げの影響は「名目額」で感じられる。
そのため、当時はデフレ下での「マクロ経済スライド」は
実施しないことになっていた。
しかし、これが「マクロ経済スライド」の妨げになった。
その後、日本経済はデフレが続いているので、
「マクロ経済スライド」は2005年から現在までに
1回(2015年)しか実施されていない。
それが今回の「年金改革法案」につながったのです。
次回は、この「年金改革法案」について詳しく解説します。