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年金への不安と不満年金カット法案」は中途半端?
昨年末に成立した「年金改革法案(年金カット法案)」による「マクロ経済スライド」機能不全修正法案ですが、修正がやや中途半端になっています。マクロ経済スライド」が機能不全に陥ったのは、デフレ下での実施を想定していなかったからである。しかし、「年金改革法案(年金カット法案)」が成立しても、デフレ下では実施されない。
では、どのような機能不全対策がとられたかというと、「マクロ経済のスライド」が2年目に持ち越せるようになったのです。
例えば、1年目がデフレで、次の年がインフレだったとします。この場合、「マクロ経済スライド」の「スライド調整率(割引率)」は2年分となります。単年度では1%程度なので、2年間では2%程度になります。
ただし、デフレが3年続くと、翌年の3年分の割引は2年でストップしてしまいます。したがって、デフレが長く続いても、その効果は限定的です。
具体的な例を挙げると、インフレ率が1%、賃金下落率が1.5%の場合、年金額は賃金下落率に比べて1.5%低くなり、大幅に下落したことになります。
デフレ下での年金額改定は、「マクロ経済スライド」に基づく割引改定にはなりませんが、減額幅は従来よりも若干大きくなります。ただし、賃金水準が下がれば、年金財政の保険料収入も下がるので、年金財政に対してはフラットになる。従来の方法では甘かったと言えます。
今回の改正内容によると、デフレが長期間続くと、以前よりはマシになったとはいえ、やはり「マクロ経済スライド」は誤作動を起こす。中途半端というのは、そういうことである。
実際、社会保障制度の諮問機関である「社会保障制度改革国民会議」は、デフレ下での「マクロ経済スライド」の全面実施を提言している。この提言よりも「年金改革法案(年金カット法案)」のほうが甘い。
いずれにしても、年金給付費の抑制が遅れれば、年金財政が均衡する着地点での年金水準が下がるので、結局、若い世代の年金水準が下がることになります。
年金改革法案」を「年金カット法案」と批判する野党に対し、政府は “若い世代の年金水準を維持するための法案 “だと主張した。野党の言い分はやはり一方的だが、政府の言い分も誇張されている。
確かに、先の年金給付の抑制によって、将来世代の年金支給水準は、遅くなった場合に比べてある程度引き上げられるが、それはあくまでも相対的な表現であり、実際には 削減額が多少抑えられている程度である。