年金への不安と不満の声”100年安心 は制度的には一歩後退

年金への不安と不満の声”100年安心 は制度的には一歩後退

何度か「年金カット法案」を説明する中で、

「安心の100年」を謳った「2004年改正」について触れました。

今回は少し脱線しますが、”100年の安心 “の意味についてお話したいと思います。

100年安心」という言葉は、

「100年なら大丈夫」というポジティブな印象を与えると思いますが、

実は年金財政の面では一歩後退しています。これはどういうことかというと、

「100年安心」以前の年金財政政策は「永久安心」方式だったということです。

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100年安心」と「永久安心」の違いは何でしょうか。
それ以前は、年金積立金からの繰り入れに頼らなくても給付が賄えるように、

必要に応じて年金の保険料を引き上げることになっていました。

年金積立金を下げずに年金給付費を賄うのだから、

財政的には “永遠の安心 “と言えるだろう。

当時は “永久安心 “という言葉はありませんでしたが、

“100年安心 “という言葉が生まれれば、それ以前のことは

“永久安心 “ということになります。

しかし、”恒久安心方式 “では、保険料を負担する現役世代や企業は、

保険料がどれだけ上がるか分からない。

当時、社会保険料はすでに個人にも企業にも重い負担となっていましたから、

それだけでは不十分です。



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2004年(平成16年)の年金改定は、

そうした批判を受けてのものだった。

しばらくは保険料の引き上げが行われるが、

上限を設けることにしたのである。

2004年の年金改定」により、

厚生年金の保険料は毎年9月に少しずつ引き上げられ、

2017年(今年)9月に最終的な引き上げが行われ、

それ以降はすでに引き上げられています。保険料率の引き上げはありません。

国民年金保険料は、最終引き上げとなる2017年(平成29年)まで

段階的に引き上げられます。ただし、国民年金保険料の額は、

物価水準や賃金水準の変動に伴い、2004(平成16)年度を基準に改定される。



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保険料の上限が設定されている以上、

年金給付費も抑制しなければ年金財政は成り立たない。

そこで、「2004年改定」の年金支出側の改革として導入されたのが

「マクロ経済スライド」である。

しかし、「マクロ経済スライド」による年金支給水準の引き下げには、

20~30年程度の長い時間がかかることが想定されていたので、

年金財政が均衡する頃には、「虎の子」の年金積立金が処理されてしまう。

そうせざるを得なかった。

当時、年金積立金は年金給付費総額の約5年分と言われていましたが、

積立金の使用は約1年分でやむを得ませんでした。



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つまり、「100年安心」の意味は、積立金を取り崩しても

約100年間は大丈夫ということで、それまでの「永久安心」からは

一歩後退しているのである。年金制度にとって「100年」は決して

長い期間ではありません。

“100年安心 “というのは、一般の人に年金財政政策のマイナスイメージを

与えないために考えられたレトリックであり、

本質的には従来の手法のマイナス変換(やらざるを得なかったが)。

表現方法であった。



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しかし、私自身は「2004年改定」に否定的ではありません。

現役世代や企業の負担を考えれば、やむを得ない改定だったと思っています。

制度維持のための負担は、「マクロ経済スライド」による「年金減額」という形で、

すでに年金を受け取っている世代が一部負担することになります。

すべてが将来の年金受給者である若い世代の負担になるわけではなく、

若い世代のシワ寄せも抑えられるだろう。この点は評価に値します。

しかし、この評価はあくまでも「見直しの方向性」に対するものです。

実際には、デフレの継続により、「マクロ経済のスライド」は

10年以上ほとんど機能していない。

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