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年金制度の基礎知識 「遺族年金・障害年金」の受給資格について
前回、老齢年金と遺族年金・障害年金の違いを
「その時」というキーワードで説明しました。
遺族・障害年金の支払いの原因となる
死亡や障害(事故の原因となる事故や病気)がいつ発生するかは不明です(=保険事故)。
したがって、老齢年金のように、
年金加入履歴全体で支給される年金や年金額が決まるのではなく、
死亡や障害の原因となる事故や病気が発生した
「その時」が決め手となります。
そのとき」に加入していた年金制度(第1号、第2号、第3号)によって、
支給される年金(基礎年金のみ、または厚生年金を加えたもの)が決まり、
「そのとき」までは 必ずしも十分な年金形成期間があるとは限らないので、
基礎年金は加入期間に関係なく満額の年金となり、
厚生年金は300月以上の加入期間があったものとみなして年金を計算します。
ただし、受給資格については、「その時」ではなく
「その前」がキーワードになります。
受給資格は “それ以前”
遺族・障害年金には「保険料納付要件」があります。
“保険料納付要件 “とは、遺族/障害年金の受給資格があるかどうかを
判断するための要件です。
老齢年金の受給資格期間は2017年8月から
「10年」に短縮されましたが、それまではずっと「25年」でした。
老齢年金の受給資格が10年に短縮されたといっても、
遺族・障害年金の「そのとき」がいつ来るのかは不明です。
例えば、加入してから3年後に「その時」が来るとすると、
老齢年金のように受給資格期間があれば必要なのに、
遺族年金や障害年金が支給されないということが起こり得ます。
保険料を支払うかどうかは、
「それ以前」にどれだけ真剣に保険料を支払っていたかに
かかっているというルールになっています。
これが「保険料納付要件」です。
具体的には、「保険料納付要件」とは、
死亡または障害の原因となった保険事故の発生前に、
例えば、25歳の若年者が何らかの事故で障害を負った場合、
20歳から5年間(=60カ月)の年金加入義務期間があります。
この60ヶ月のうち、通算滞納期間が20ヶ月以下であれば、
保険料納付要件をクリアしますが、21ヶ月以上であれば、
他の要件(障害等級に該当することなど)があっても、
保険料納付要件を満たさないことになります。
現時点では、「経過措置」として、直近1年分の保険料を支払っていれば、
保険料納付要件を満たすことになります。つまり、
「それ以前」の滞納期間がどれだけ長くても、
直近1年分の保険料を納めていれば、
「保険料納付要件」はクリアされるのです。
これは「経過措置」なので、いつかは消えますが、
いつ消えるかは定かではありません。
正確には、「それ以前」とは、
遺族年金・障害年金の支給原因となった
死亡や障害(その原因となった事故や病気)があった月の
「前月以前」の加入義務期間のことです。
前々月以前」の理由は、「保険の逆選択」を避けるためです。
国民年金の保険料は後払いなので、
今月末までに支払った保険料は前月分となります。
前」が文字通り「その月以前」であれば、
保険事故の時点ではまだ支払うべき保険料が発生していません。
したがって、障害年金や遺族年金を受給するために
保険料を滞納していた人は、急いで過去に滞納していた分も含めて
保険料を支払い、「保険料納付要件」をクリアする。
保険事故発生月の「前月以前」の場合は、保険事故発生時にすでに
保険料納付期限を過ぎているため、保険事故があったことを理由に
保険料を支払うことになります。”逆保険選択 “はできません。
保険料免除・保険料払込猶予・資格について
遺族年金・障害年金の「保険料納付の要件」には、
先に説明した第1号被保険者の「保険料免除期間」と
「保険料納付猶予制度」の意味が出てきます。
保険料免除期間」は老齢基礎年金の年金額に一部反映されますが、
「保険料納付猶予期間」は年金額に全く反映されません。
しかし、それぞれの期間は「滞納期間」ではなく、
年金制度上、保険料を正式に納付しないことが
認められている期間であるため、
遺族・障害年金の「保険料納付要件」には「保険料納付」と
老齢年金でも対象となりますが、老齢年金の場合は、
対象期間が10年に短縮されているので、あまり意味がありません。…
しかし、遺族年金/障害年金の受給資格という